インプラント治療において年々普及が進む歯科用CT。インプラント医院を選ぶポイントの一つにCTがあるかどうかも大切となってきます。

今回、歯科用CT「プロマックス3DS」を導入した審美インプラント歯周病クリニック 菅鉢院長先生にCT導入のキッカケとその理由について深く掘り下げてインタビューをするとともに、そのCTの有効性について分かりやすくお話をしていただきました。

(2010年7月:聞き手/株式会社ゼロサン)

インプラント治療における歯科用CTの重要性

―― まず、今回、歯科用CTを導入したキッカケについて教えてください。

以前から、CT診断はインプラント治療に活用していましたが、撮影自体は別施設の医科などで行っていました。開業して間もない5~6年前当時は、自医院で導入しようとなるとCTの機械自体も大きく、それを設置する大きなスペースが必要で現実的ではありませんでした。そして個人開業医として課題となるのがやはり機械自体の「費用」でした。

CTスキャン
▲医科にあるCTスキャン。
機械自体が大きく、スライス幅も大まか。

ですので当院としてもインプラントで術前の状態を診断は、医科のほうに撮影を依頼していたわけなんです。しかし、ここ1~2年の間に歯科用CTがものすごく進歩して、民間の歯科診療所のレントゲンのスペースの範囲内で口腔内の撮影が可能になるほど、機械が縮小化してコンパクトになり、なおかつ撮影解像度もより鮮明になったことが導入の大きなキッカケとなりました。

プロマックス3DS
▲今回導入の歯科用CT「プロマックス3DS」
通常のレントゲン室のスペースで手軽に撮影できる

またインプラントだけではなく、歯周病や親知らず、埋伏している歯の検査、顎関節、歯根の状態を見ることまでも可能ということを知り、「そこまで進歩してるなら」とメーカーにCTを見に行きました。

細かい術前診断や治療結果の再考察の観点から、これは必ず重宝する機械であると確信できたんですね。それで今回導入に踏み切りました。今、ここで歯科用CTを導入すれば、自分の理想とする診療コンセプトに大きく役立つと思えたんです。

その有効性とは?

―― CTがある医院と無い医院での違いは?その有効性についてお教えいただけますか?

分かりやすくいいますと、

●レントゲンは2次元の画像です。平面の絵で1方向から見るだけ、というものです。
●歯科用CTは3次元の画像です。立体の絵として奥行きが分かり、歯や骨の状態が見れます。

レントゲン(2次元)
歯科用CT(3次元)

2次元で見れなかったものが3次元で見れることにより、歯の周囲で「何が起こっているのか」を立体的に見ることが出来るんです。何が原因で痛みの症状が起きているのか、等がよりはっきりと原因追求ができるようになったわけです。

実際に当院がよく治療している治療方法の一つに「根管治療」がありますが、症状で「歯茎が腫れる」「なかなか痛みが消えない」「膿が止まらない」ということがあります。今までのレントゲンの2次元画像では、なかなか推測でしか分からなかったものが、3次元のCT画像で見るとその歯が割れていたり、小さなヒビが入っていたりする絵が鮮明に見えるようになったわけです。今まで原因が不明確で治療をして経過を見て判断していたものが、実際は歯が割れているので治療しても治らないということが初診で分かるわけです。

また、患者さんへ歯の状態をキチンと説明できるということの点でもメリットは大きいです。
CTで見るとヒビが入っていた、痛みのある歯のその隣りの歯から感染が起きていた、とか、そういうのを初期診断で正確に早く見ることが可能になったわけです。患者さんにも示しやすい、原因がはっきりすることで、治療に対しての方針も立てやすくなるんです。

院内にCTがあることによって、すぐ撮影、すぐパソコンで見れる。そういったタイムラグのない治療が可能となりました。

―― 極端に言えば、2次元の診断を誤ると、いつまで経ってもその原因を掴めない、とうことがありえるのでしょうか。

CTを撮影依頼していた

例えば歯茎を切開して患部を目視で確認してそれで初めて原因が分かる、ということもあるかと思います。でも患者さんは出来ることなら切られることを望んでいない。切ってみて原因がなかった、となれば余計な侵襲となるわけです。

実際にレントゲンで根尖病巣*(こんせんびょうそう)を発見し、膿が大きいのでそれを取り除こうという診断となったことがありました。処置方法は歯茎を切って、歯根を切って、感染源を取り除こうと。しかし実際歯茎を開いたら、そこで初めて歯根が割れていることが判明したんです。 *歯の根の先に膿の袋ができること。

もし仮にCTがあったなら、撮影で明らかに画像として歯根破折が見えるので、初診の時点で「歯根が割れているので完治する可能性は低い」と言え、最初の時点で違う治療方法を早く考えられたわけです。このいわゆる歯の根っこが割れる「歯根破折」という状態は以外と多く見つかるんですよ。

ですから、CTがなければ「全然治療が出来ない」というわけではありませんが、不確実なまま、手探りの状態で、治療する可能性はあるわけです。原因を掴めないから、治療して経過を見て待てども待てども治らないと。原因を追究できやすい、という一言ですね。

―― CTが、次の治療ステップの対応を確実なものにできるということでしょうか?

そうですね。初期の段階で患者さんにもキチンとした説明ができます。レントゲンによる診断ですと、ステップを踏んでじっくりと診断、推測が入り幾つか考えられる原因の仮説をたてて、そのを一つ一つ消去していくようなイメージです。歯科用CTの診断であればその仮説が最小限に少なくなります。

実際のCT診断例

歯をぶつけた小学生の例 (1)歯をぶつけた小学生の例
耳鼻科に対診した例(2)耳鼻科に対診した例
親知らずと下顎神経の位置関係(3)親知らずと下顎神経の位置関係

(1)歯をぶつけた小学生の例

破折が見つかり、抜歯の処置を行った。レントゲンですと、この破折は見えなかったでしょう。

(2)耳鼻科に対診した例

インプラントの治療をしようとして、蓄膿症が見つかったんです。
レントゲンだとぼや~っとは何となく見えますが、CT画像ほどはくっきりとは見えません。

(3)親知らずと下顎神経の位置関係確認例

レントゲンでみて下顎神経がありますが、親知らずの抜歯などを希望された場合、必ず下顎神経と根っこの距離を見ます。神経に近い場合、例えば根っこと神経が交差しているような場合は、1回で抜かないで段取りを踏んで治療するとか、そういう診断ができます。神経に触れたり、傷つけたりすると顎にシビレの症状が残ります。レントゲンだと神経と根っこが交差しているまでは分かりますが、それが奥行きがあって離れているのか、近いのかは分かりません。

―― 今のようなお話を聞きますと、CT診断は本当にインプラントだけの話ではなくなってきますね。

そうですね。基本的にインプラントだけに使う機械ではないんです。多くの先生方がみんな購入当初に「インプラントで役立てたい」と思うんです。ただ導入して使用するうちにインプラント以外にも、ものすごくいろんな治療に役立つんだと分かってくるわけです。治療の幅が広がり、患者さんへのインフォームドコンセントにもメリットが大きい。ですからインプラントだけで考えると高価な機械ですが、歯科治療全体で考えるととても重宝します。もう必須アイテムと言えるくらい重要性を実感しています。

あとは、先ほども申しましたように、自分たちが行った治療がキチンとできているのか?の術後や治療経過の確認にも役立ちます。

インプラントの話に戻しますと、インプラントのトラブルで以外に多いのが経年数とともに発見される歯根側の露出です。インプラントの頭の部分だけ見ると問題なく埋まっているように見えますが、ネジの先は飛び出しているという状態です。埋入の角度や骨の深さ・高さ・幅を見誤った例ですね。CT撮影による診断だとこれを回避できます。

CTは診断前の撮影がクローズアップされがちですが、術中や術後の経過にも活躍する(有効である)ということです。

―― 4~5年前にくらべて歯科医院へのCTの普及も急速に進んでいます。CTがあるかどうかを患者さんも参考にしているとは思うのですが、インプラント治療をする歯科医院はCTが必要でしょうか?

医院になくても出来るとは思います。ただあったほうがより安全で確実な良い治療ができると思います。

―― CTがあればそこの歯科医院は安心であるといえるでしょうか?

CT診断CTをどれだけ使いこなせているかによるでしょうね。ただCT診断を治療に使えば使うほど、診断技術がどんどん向上していくのは確かです。ですのでCT診断をやっている先生とやっていない先生では相当差があるのは間違いありません。

「木を見て森を見ず」とでも申しましょうか。CT診断により視野が広がり、治療の幅が広がりました。

歯科医院全体を見ると、CTはまだ2%しか普及していないと言われています。どの歯科医院でもあったほうがいいとは思いますが、まだ保険では認められていません。ですので、CTを必要とするかどうかの判断は、その先生の治療に対する熱意の度合いが関係してくるでしょうね。

―― CT導入以前の診断はどうされていたんですか?

患者さんにはいつも申し訳ないなぁと思いながらも、医科用CTのある施設へタクシーで20分くらいかけて足を運んでもらっていたんですね。撮影したものを施設から送ってもらって、そのデータを東京に送り、また返ってきたデータをシンプラントという画像処理ソフトで見る、…といった工程でした。それでいて画像があまり鮮明ではなかったんです(医科用CTのスライス幅の問題で)。もちろん埋入してすぐの術中にCT撮影というのは当然無理でした。

ですからそのわずらわしさがなくなりましたし、撮影は今までのレントゲン撮影と同じ感覚で立ったまま、座ったまま撮影することが出来るようになりました。

スピーディー撮影で、患者さんにすぐに回答できる

また、私にはインプラントできますか?という質問が非常に多いんです。CTを撮らないと分からない不明な点が非常に多かったですね。レントゲンだけでも診断は可能です。そしてさらに詳しく調べるために、施設へ行ってもらいCT撮影。いままでは診断結果が分かるのに2週間かかっていました。

それが今では、

「インプラントできますか?」→「ではCT撮影1枚撮ってみましょう」→「結果報告」

…と小1時間で話が終わります。そのレスポンスの早さを見ても歴然ですよね。

例えば歯を支える骨が無くなりはじめている患者さんに対しては、無くなる前に骨造成治療で骨を作って、それからインプラントを埋入しましょう、というスピーディーな診断ができます。支える骨が全く無くなってからでは遅いですからね。

―― 菅鉢先生の「悪くなる前に」という診療方針に繋がるのがCT撮影ですね。いちはやく治療をしてできるだけ歯を残そうという考え方に大いに活躍するアイテムとなりますよね。

インプラントでCT撮影による診断で安全面が認知されるとともに、それ以外の治療でもCT撮影は有効なんだということをもっと患者さんに分かってもらえたら嬉しいですね。

身体の全体のことで考えると、例えば健康診断に行くと、身体全体のCT撮影はしますし、脳であればMRIを撮影したりするわけです。レントゲンだけでは分からないからCT撮影の技術が生まれた。それを考えると歯科にも同じようなことが言えるわけです。“歯科版人間ドック”という意味でも重要な設備の一つと言えるでしょう。

―― 取材後記
歯科医師としての向上心から生まれる危機感からCT導入を検討したこと、また「患者さんへの分かりやすい説明と素早い診断に繋がる」という言葉が印象的でした。今回のお話で、CT撮影・診断がなぜ大切なのか?がとても理解できました。これからインプラントをお考えの方、もしくは歯の症状ではっきりと原因がつかめない、…などといった方は、CTのある歯科医院で検査を受けてみてはいかがでしょうか。

菅鉢先生のクリニックをご訪問される際はぜひこの「インタビュー記事を見た」とお伝えください。あなたにとっての今最善の治療方法のアドバイスをしていただけると思います。

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